「知的生産.exe」という巨大なアプリケーションと大小様々なツール
今回は「知的生産.exe」というアプリケーションについて検討しようと思います。
このアプリケーションは極めて大きく万能です。そしてまた，多くの愛好家や研究者がいます。
ここでの検討は後に続くエントリのために必要な最小限度にとどめようと思います。より包括的な検討や別な視点からの検討をなさったかたがいましたら，ぜひ教えてくださいね。
知的生産.exe は，情報を入力し，編集し，出力することのできるアプリケーションです。
このアプリは，「情報を入力し，編集し，出力する」ことに関してなら何でも（文字通り “何でも”）することができます。正確にいえば，「入力以前」すなわち「収集」の段階についてもさまざまな機能を提供しています。
この多機能さや自由度といったものは，大量の情報を扱うひとびとにとってはたいへん役立ちます。けれども，扱う量が多くないひとにとってはアプリの使い方を覚えるほうが手間です。それゆえ長らく，このアプリは研究者や一部の物好きにしか使われてきませんでした。
しかし，近年ではインターネットを通じて 知的生産.exe の使い方を説明するひとが増えてきています ── なお，「インターネットを通じて 知的生産.exe の使い方を教える」という発想自体， 知的生産.exe から生まれたものです。ついでにもっと言えば，「インターネット」という仕組みもまた 知的生産.exe から生まれました。
こんにちでは 知的生産.exe は大変多くのひとに利用されています。似通った使い方をするひと同士で，ファンコミュニティも作られています。
知的生産.exe の扱える情報は，「あらゆる情報」です。
さて，ファンコミュニティの登場による影響を話すまえに，ひとつだけ付け加えたいことがあります。
それは，「知的生産.exe の扱える情報は，『あらゆる情報』である」ということです。
一部のひとびとはこのアプリの扱う情報が 文字情報/言語情報 に限られていると考えているようですが，これは誤解です。
たしかに，このアプリと 文字/言語 との相性は抜群に優れています。わたしたちがこのアプリについて語ろうとすると，たいていは 文字/言語 によっています。
しかし，あくまでこれは相性がよいという話であって，機能が 文字/言語 に限定されているわけではないのです。知的生産.exe を使って音楽を作ることや美味しい料理を作ることは十分可能です。ファンコミュニティで「自分はどのように 知的生産.exe を使っているか」を説明するために，巨大な絵画を作るかただっているかもしれません。
ファンコミュニティで取り上げられる話題
話をファンコミュニティの発生に戻します。
現在では，非常に多くのファンコミュニティがあります。それぞれのコミュニティはしばしば， 知的生産.exe の一部にスポットをあてて研究しています。たとえば「“Tools » 手帳” を使った情報の入力・編集・出力方法」「“Tools » workflowy” を使った情報の入力・編集・出力方法」などです。
“Tool » 手帳” や “Tool » workflowy” といった個々のツールもまた，知的生産.exe を使って誰かが作りだしたものです。
ここに面白い傾向があります。
知的生産.exe は文字通り “万能” です。であれば，このアプリの使いみちは多岐に渡っているはずです。けれども，多くのファンコミュニティでは，ある一定の用途を想定して（あるいはモデルケースとして）アプリやツールの使い方を説明しています。
その用途とは「よりよく知的生産する方法」です。強調して言い直せば，「“知的生産それ自体” をよりよくする方法」です。つまり「エレガントなゴミ出し」や「美味しい料理のレシピを考える方法」といった個別の対象を語らず，対象を “知的生産それ自体” にまで抽象化するのです。再帰的といってもいいでしょう。
この手法には優れた側面があります。抽象度を上げることによって，誰もが別個の体験から同じ話題について語ることができるという点です。しかし他方で，わたしはこの抽象度がゆえに後述するような誤解を抱いていました。この誤解を抱いているひとはきっと大勢いる気がしています。
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